かの有名なブレゲが発明した機械です。
縦位置での姿勢差をなくすための機構です。(図は横位置)


ちょっと分かりにくいとは思いますが簡単に言うと、歯車の上にテンプ周りの機構一式が乗っかって
機構ごとぐるぐる回るというものです。


籠が乗っているのは通常スモールセコンドが取り付けられる軸です。
伝わってきた力はこの籠の下側の歯車を回します。
するとそこに乗った機構ごと一緒に回り、ガンギの下のギアを、
固定された大きな歯車に沿って引き回そうとする訳です。
それによってガンギ車に力が伝わり、アンクル、そしてテンプが稼働します。
時を刻むごとに少しづつガンギ車が歯車に沿って移動し、籠が回転していきます。


籠の回転で秒針を兼ねる事が多いので、最近のトゥールビヨンは
1分間で籠一回転というのが多いです。
(4分一回転とか2分で一回転とか他にもあります)


製作が大変難しくよほど腕のいい時計師にしか作れなかったため
アンティークでも数がとても少なく高価です。
現行品でも少し前は出せるメーカーもごく一部に限られていたので
トゥールビヨンというだけで1000万円くらいしていました。
しかし最近量産型の腕時計用トゥールビヨンムーブメントが発表され
各メーカーが採用し始めたためそのようなものは以前に比べ低価格で
(といっても数百万で)買えるようになりました。
最近になってさらにもう一桁安いものも出てきたようです。


トゥールビヨンにも大きく分けて3種類あり、
伝統的な、ブリッジとキャリッジを持つノーマルのトゥールビヨン、
ブリッジを廃し、キャリッジが浮かんで回っているように見えるフライングトゥールビヨン、
キャリッジを廃してしまったミステリートゥールビヨン、というのがあります。
後の2つは割と最近になって開発されたものです。


基本的にトゥールビヨンは懐中時計のために考えられた機構で
縦位置の使用をする場合に姿勢差をなくすよう作られたものです。
なので腕時計に搭載する事によって特に際立った効果が望めるものではありません。
懐中時計に搭載しても、それによってものすごい精度が出るかというと
部品の加工精度が良くなった現在ではさほど変わらないでしょう。


今作られているトゥールビヨンの時計は実用目的というよりも
動きの美しさや機構の面白さを楽しむとか、高額で誰にでも買える訳ではないという
ステータスシンボルとしての意味合いがほとんどであると思います。
私はトゥールビヨンの時計は安いのしか所有していませんが、
確かに神秘的な動きをします。視覚的に面白いのは確かです。


最近の腕式トゥールビヨンの画像です。
メーカーによってブリッジや籠の支えの形に工夫を凝らしています。
  

  

  

時計ファンとしては、お金さえあればやはり欲しいものの一つではありますね。




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