スイスメーカーの北米向け(北米仕様)懐中時計について


北米仕様のスイスウォッチの存在はあまり知られていないので概要をお書きします。

スイスメーカーの時計で北米からの注文や、北米市場に向けて製造された時計達は
北米のケース規格に合わせて機械が作られています。比較的ショップウォッチである事が多いですがそうでない場合もあります。
当時アメリカには時計メーカーが多数ありましたがショップウォッチはなぜかスイスメーカーが多いようです。

ムーブメントはアメリカやカナダの12サイズ、16サイズ、18サイズなどのケースにぴったり収まるように設計されています。
スイスのケースサイズはアメリカの規格とは違うので最初からアメリカのケースに合わせて作らないと合いません。
また本来スイスものの時計は巻き芯の留め方がアメリカ式とは根本的に異なりますが
北米仕様のムーブメントは機構(巻き上げと時刻合わせを司る部分)も多くがアメリカ式に合わせられています。
本国仕様とは設計からして別になります。表面の仕上げや機械の作りなどもアメリカの時計を意識したものも多いです。

これらの機械をアメリカやカナダ(多くはアメリカ)に発送して北米でケーシングされて販売されました。

サイズや構造をあえてアメリカの規格に合わせてアメリカのケースに収めるように作られているのは
これはおそらく当時の税制によるものと思われます。(当時は完成品としての時計の輸入関税が高かった)
腕時計でロンジンがウィットナーに向けてエボーシュ(ケーシングされていない機械)を出荷したのとおそらく同じ状況です。
機械を輸入して国内でケーシングすれば時計の輸入ではなく機械の輸入となり税金が抑えられたと考えられます。

メーカーとしては有名どころが多く、オメガ、ロンジン、バセロンなどに北米仕様が結構見られます。
各メーカーとも12、16、18サイズ用など各サイズ作られています。
レイルロードウォッチを意識したような16サイズや18サイズの多石のレバーセットモデルもあります。
例えばロンジンのエクスプレスモナークなどは18サイズ21石でなかなかの名品です。

ギャレットやタバネスなど他のスイスメーカーにも北米仕様がたまに見られます。